こんなトラブル 
静電気  
                (杉本和樹)

撮影から帰ってくるなりただちに、4×5のPXT(プラスX)を現像したところ、フィルムに一見「カビ」に見えるものがでた。ルーペで確認してもカビに見える。同時に現像した20枚中3枚に出た。
 もちろん、フィルムの有効期限が切れているわけでもなく、しかも、冬期のことでもあり高温・多湿の所に置いていたわけでもない。現像処理も自動現像機で行い、現像時のトラブルとも考えにくかった。もし、原因が機械によるものであれば20枚のフィルムほとんどに出てもよいはずであり、ローラー搬送式なので、出るとすれば規則的に出るはずだ・・・。カメラにもレンズにも異常は無し。
 そこで、「こんな腐ったフィルムを売りおって。コノヤロー!」と、日本コダックに文句の電話をした。返答は「現物を一度みせてくれ」ということで、ただちに郵送し、調べてもらった。
 結論としては“静電気”だということだった。そこで、「どうしてこうなったん?」と聞くと、「顕微鏡で見てもカビは発見されません。銀粒子が黒化しており感光しています。私どもも、このような形をした静電気は初めて見るものでして。多分、冬の事でもあり、乾燥した部屋で安物の化繊のセーターなどを着てフィルムの出し入れをすればフィルムに静電気が蓄積され、それが自現機へ挿入時に、フィルムとローラーの間で放電したのと違いますやろか?」とのことであった。
 私のフィルムに関する静電気についての知識としては、静電気には“陰”“陽”があり、普通に見られる静電気は「稲妻型」だという程度だった。
 私も、セーターなど毛羽だったものを着てフィルムを


 
入れると毛がフィルムに付いたりしてしまうものだから一応、それなりに気を付けてはいたのですが、なにせ「ビンボー」なので安物を着ていたのは確かだ。
 皆さん!いくら暗室が寒いといっても、安物の静電気の起こりやすい物を着込んでのフィルムの出し入れは危険なのでやめましょう。それしかない人は裸でしましょう。
 聞くところでは、静電気のトラブルにも色々あって、35mm判でもフィルムを急に引き出したり、巻き上げたりするとパトローネとフィルムが擦り合って稲妻型の静電気はよく起きるし、時と場合とでは「蜘蛛の巣形」が出るそうである。また、化繊のシュウタンの上を革靴で走り回りシャッターを切り、カメラ内で放電し感光してしまったケースもあるそうだ。何にせよ、フィルムに静電気が溜まるとホコリや糸屑が吸いつきやすくなり、トラブルの発生のもとになることは確か。用心!用心!
       〈奈良国立文化財研究所 すぎもとかずき〉