Re: ポジフイルムの増・減感の指示 ( No.1 ) |
- 日時: 2003/11/07 09:16
- 名前: 井本
- 最初におことわりしますが、リバーサルフィルムの増・減感現像を安易に利用しないで下さい。
埋蔵文化財写真では、フィルムの増・減感現像を必要とすることは皆無と思えるからです。さらに増・減感現像をすると、そのフィルムが本来持っているコントラストやカラーバランスに変化を与えます。大概の場合、この変化は、好ましくないものになりますので、やむを得ない場合以外は、ラボに依頼しないようにして下さい。
増感現像から答えます。 もともとの増感現像は、撮影場所の光線状態では、持っているフィルムの感度が不足し、より速いシャッターを切ったり、より絞ったりすることが出来ない状況で行われました。 例えば、ISO100のリバーサルフィルムを持っていて、補助光も三脚も使えない状況で室内撮影をしなければならないという場合です。その時の露光がISO100で1/60秒・F4とします。カメラブレを最小限にするため、1/125秒・F4で撮影したいという時、ISO200であれば可能になります。そこでフィルムの感度設定をISO200として、1/125秒・F4で撮影します。そのまま撮影したフィルムをラボに渡して普通に現像したのでは、単に露光アンダーの暗い画像となってしまいます。
増感現像の依頼のしかた ISO100のフィルムをISO200で撮影した場合、そのフィルムの感度を1絞り分増感させた現像を依頼するのですから、「1絞り増感」と指示してラボに依頼します。場合によっては「1/3絞り増感」あるいは「12/3絞り増感」といったように依頼者は何絞り分の増感現像であるかを指定すればよいのです。実際に撮影した感度で指示しないようにして下さい。ラボでは次の述べるように、何絞り分の増感の指示かによって現像時間変えますので、撮影感度で指定してあると換算で間違いが発生する可能性があります。
増感現像の方法 ラボでは、リバーサルフィルムの現像処理で最初の工程である、第一現像の処理時間を変えて増・減感に対応します。標準ではこの第一現像は38℃で6分間、感度通りの現像であれば、フィルムの感度が違っても第一現像時間は同じです。この第一現像時間を延長するのが増感現像です。何絞り分の増感現像をするかによって第一現像時間の延長度合いが異なります。 1絞り増感では、8分に、2絞りでは10分に、3絞りでは12分に、4絞りでは14分に第一現像時間を延長します。細かい段階の増感現像もあります。例えば2/3絞り増感といえば、ISO100のフィルムをISO160で撮影した場合で、この場合は7分20秒の第一現像となります。ラボはこの段階を細かく1/4〜1/3絞り単位で第一現像処理時間を変えて対応しています。 このようにフィルム固有の感度で捉えられなかった光を増幅させるため、現像時間を延長させるのが増感現像です。実際の感度も1絞り以上になると上昇度合いが飽和し、コントラストの上昇と画質の低下が大きくなり疑問です。
増感現像料について 当然手間がかかるため割り増しとなります。細かくはプロラボの現像料金をインターネットで調べてみてく下さい。 フィルムサイズによっても異なりますが、2絞りくらいまでの増感では15〜20%増し、2絞り以上はさらに20%増しという場合もあります。
増感現像のデメリットを挙げます。 現像で感度を変えられるなら便利と思われるでしょう。もし増感現像で適切な結果が得られるとしたら、メーカーは高感度フィルムを作ったりしません。 増感現像するほど粒状性が悪くなります。増感現像するほどコントラストが高くなります。 増感現像するほどフィルムの最高濃度(黒のしまりが悪くなります)低下します。 増感現像するほどカラーバランスが悪くなります。
減感現像について 減感現像を依頼する確率は極端に少なくなります。感度を下げて露光しなければならないことは少ないからです。
減感現像の依頼のしかた 増感現像と同じように、「何絞り分」とういうようにの減感現像を指定します。 ISO100のフィルムをISO64で撮影したとすると「2/3絞り減感現像」、同じフィルムをISO50で撮影すると「1絞り減感現像」になります。
減感現像の方法 増感とは逆に第一現像の現像時間を短くするのが減感現像です。フィルムの特性から現像時間を短くすると、ヌケが悪くなるため、減感現像は幅広い度合いで受け付けていません。 最大で1絞り強くらいと思います。 1絞り分の減感現像では、第一現像時間は5分間です。
増感現像料について 増感現像同様に割り増しとなります。細かくはプロラボの現像料金をインターネットで調べてみてください。 フィルムサイズによっても異なりますが、1絞りでの減感では15〜20%増しという場合もあります。
減感現像のデメリットを挙げます。 減感現像するほど粒状性がよくなりますが。減感現像するほどコントラストが低くなります。減感現像するほどカラーバランスが悪くなります。 減感現像は増感と逆のパターンで画像が変化します。
増・減感現像が出来ないラボもある 増・減感現像は第一現像時間のみを変化させて行います。他の処理液の時間は変更してはならないのです。大都市部にあるプロラボでは自動現像機のハンガーにフィルムを吊し、そのハンガーを順番に処理液のタンクに浸して現像処理をしています。このタイプの自動現像機では、第一現像液にハンガーが浸っている時間を細かく設定することが出来ます。従って増・減感現像を受けることは可能なのです。 しかし地方になると、ミニラボタイプの自動現像機が多くなります。このタイプの自動現像機は、リーダーをフィルムに貼り付け、処理液のラックを通過させて現像します。このタイプの自動現像機での現像時間の調節は、処理液のラックを通過する時間(スピード)を変えることでしかできません。増・増感のために第一現像の時間を変えると、他の処理液の時間も同じ比例で変化してしまうのです。 従ってミニラボタイプの自動現像機のラボでは、増・減感現像はできません。受けたとすると別のラボに外注ということになります。
コマーシャルのプロカメラマンで、増・減感現像を多用する人もいます。ただし適用範囲は1/2絞りくらいまでの増・減感現像です。僅かの増・減感現像での効果を利用したりします。この効果は、研究会誌14号で勝田さんが実例を紹介しています。 コマーシャルのプロカメラマンの増・減感現像の多用とは、同一被写体を数枚、または数本を同じ露光で撮影し、一部を通常で現像し、その結果を見て、他のフィルム現像で細かな指定をする人もいます。僅かに増感すると、幾分のコントラスト上昇とともにヌケがよく見える場合があります。そのため減感の指示はあまり無く、大概は1/2絞り未満の増感現像の指示が多くなっています。またこういう人たちは、撮影で段階露光をしません。現像で露光の微調整をしているともいえます。このようにプロの中では、元々の増・減感現像とは違った目的で行われているのが多いのです。
いずれにせよ増・減感現像は文化財の写真では薦められません。
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