Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.1 ) |
- 日時: 2003/10/21 15:15
- 名前: 井本 昭
- A-1
後のQから答えます。フィルム画像での圧縮とは、被写体の持つ輝度(明暗)範囲が、再現された画像で、濃度範囲が小さく(明暗差が小さく)なることです。 被写体の明暗差よりも、フィルム上の明暗差が小さい状態、別な言い方をすると低いコントラストに再現された状態です。カラーネガも白黒ネガも、適切な露光と現像がなされた場合、ネガティブに再現される濃度範囲は、被写体の輝度範囲の半分くらい(50〜60%)に圧縮されます。 その大きく圧縮された画像を、コントラストの高いペーパーに約4倍伸長させて再現させています。 カラーリバーサルは、被写体のもつ輝度範囲にたいし、再現された濃度範囲が少し大きくなっています。こう表現すると圧縮なしで、少し伸長させているように思えますが、実際には、中間部からシャドー部では伸長し、ハイライトの領域では、調子がとばないように徐々に圧縮し始めます、ハイライト側はコントラストを低くしているのですが、中間部からシャドー部はコントラストが高い状態です。 以上のように、ネガは全体が大きく圧縮されています。
A-2 最初のQですが、りゅうさんは、再現媒体を考えないという条件を付けていますが、その条件なしでこの件に実質的に答えることは出来ません。媒体によって再現されない部分があるとすれば、写っていないに等しいからです。 恐らくりゅうさんは、カラーペーパー上に再現された画像が、リバーサルフィルムの画像に比べて、再現範囲が狭いと感じていることから、圧縮を受けているのはどちらなのか、迷われているではないかと思います。 結論ですが、カラーネガもカラーリバーサルも再現できる範囲は同じです。 コダックにカラーネガティブからカラーポジを作るための、ベリカラー プリント フィルムがありました。過去形になっているように、最近製造中止(市中には少し残っていると思いますが)になりました。このフィルムを使ってネガカラーからカラースライドを作ると、黒も充分な濃さにが得られてカラーリバーサルと同じような調子再現になります。 大きく圧縮したネガカラーも、ペーパー以上に伸長させた媒体(プリントフィルム)に再現すれば、カラーリバーサルと同じであるということです。
Aー3 スキャナーでの取り込みについては、私の不得手の部分です。フィルム画像として考えられることを述べてみます。 既にカラーネガ、カラーリバーサルは、どちらの再現でも同じといいましが、圧縮と伸長が正確に行われた場合という条件がつきます。 カラー写真でも、撮影のラチチュードが広く撮影が楽という理由で、ネガカラーを薦める人がいます。これはとんでもいない間違いです。 そういう人は撮影だけして、カラーネガからプリントを焼いたことのない(ただし手焼きで)人です。大きく圧縮されたネガカラーは、正確に大きく伸長(増幅)されなければ適切な画像にならないのです。カラープリントでは、ほんの僅かの露光の過不足やフィルターの違いが、プリント材料で大きく伸長(増幅)されるため、大きな差になって再現され ます。これは当然カラーペーパよりも、A-2で紹介したプリントフィルムの方が難しくなります。 スキャナーで取り込む場合でも同じことがいえると思います。圧縮されたものが僅かでも誤差が生じて取り込まれると、それは本来の状態から大きく離れて再現さてしまいます。 カラーネガのYMC3色の圧縮状態は、カラーペーパーの伸長状態に合わせて、微妙に違っています。これはメーカーによっても違ってきます。またメーカーは、ペーパーのマイナーチェンジや、また微粒子と色再現の競争から、短期間のうちに新種のネガカラーを数多く販売しています。その都度ネガカラーのYMC3色の圧縮状態と、オレンジ色というか赤みを帯びた着色(カラードカプラー)の色が違っています。 そういうカラーネガという素材を適切に取り込み、その後に適切に伸長(増幅)させるのは、高精度(AD変換の)なスキャナーとフィルム銘柄に合わせて適切な取り込みや出力の微調整が不可欠と思います。
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.4 ) |
- 日時: 2003/10/20 17:11
- 名前: TAMA
- りゅうさん
ご質問は、実際に使うためですか? 理論値ですか?
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.5 ) |
- 日時: 2003/10/20 16:21
- 名前: りゅう
- >>TAMAさん
スキャナで取り込み後、レタッチする際に階調が圧縮されていない方がいいと思いましてこういう質問に至りました。
>>井本さん いつも詳細な解説ありがとうございます。
ということは、ポジとネガを全くの同条件でスキャニングできたと仮定(こんなことはありえないでしょうけど)すれば、ネガとポジの取り込まれた画像では階調の再現性が異なる、という理解でよろしいのでしょうか?
井本さんがおっしゃられたように、紙焼きとポジ(透過光観察)を比べると、明らかに紙焼きの画像は中間調が圧縮ないし省略されてるのでは?という疑問は少なからずありました。これはペーパーの再現できる濃度範囲が透過光に全く及ばないということで理解してました。しかしポジをダイレクトプリントすると、ネガ以上にハイコントラストな(言い換えれば階調が省略されたような)画像を目にします。この疑惑?から、フィルムとして見た場合の、階調の圧縮はポジとネガのどちらが過度なのかという今回の質問につながってるわけです。
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.7 ) |
- 日時: 2003/10/21 15:54
- 名前: 井本
- 後の質問からお答えします。
リバーサルフィルムの階調再現性を、ダイレクトプリントの結果で判断してはいけません。 その理由は、リバーサル(ダイレクト)プリントの品質は、ネガカラーカラーのプリントに比べて調子再現が劣るからです。近年リバーサルプリントのペーパーも、昔のものに比較すると改善されてきましたが、まだプリントの質ではネガカラープリントに及びません。 ちょっと考えてみて下さい。もしリバーサルプリントとネガカラープリントの品質とが同等になっているとしたら、ネガカラーが存在する意味は無くなります。 既にお話ししたように、リバーサルフィルムは、中間部からシャドー部の階調を少し伸長させ、ハイライト部を圧縮させています。このようなリバーサルフィルムから調子の良いプリントを作るためには、ペーパーの中間部からシャドー部を少し圧縮(コントラストを低く)させ、ハイライトの圧縮を解いて、スッキリとしたハイライトと白ヌケが再現できるように改善が続けられてきました。しかしそれでもまだ不十分であるということです。その結果リバーサルプリントは、中間からシャドー部のコントラストが高く(つぶれ気味になり)、ハイライトがとび気味でありながら、白ヌケがスッキリとしない再現になりがちです。もし白バックで黒っぽい土器を撮影したリバーサル原板からプリントすればこの傾向は明瞭です。 カラーリバーサルは、長い間の研究と改善の結果、適切な撮影と現像がなされれば、透過光で観察すれば自然な調子を再現します。リバーサルフィルムの設計では、フィルムの上に再現される色と調子を考慮しても、プリントのためにフィルムの調子を変えることはしません。 カラーリバーサルからのプリントでも、中間ネガ(インターネガ)を作って、ネガカラーペーパーにプリントするとダイレクトプリント以上の調子が再現されます。これは、インターネガのフィルムが、先ほど話しましたリバーサルフィルムで行われた伸長と圧縮が、プリントにした場合に、不自然とならないようネガを作る段階で、変化させているからなのです。このインターネガも最近は消え去る運命にあります。 りゅうさんの「ダイレクトプリントすると、ハイコントラスト」になる理由は上記の通りです。 一方、カラーネガフィルムは、適切な撮影と現像をしても、まだ鑑賞できる状態ではありません。プリントにして初めて鑑賞できるものになります。ネガカラーフィルムは、ペーパーに焼かれて調子よい画像となるように、それだけを考えて設計されています。 りゅうさんの「ペーパーの再現できる濃度範囲が透過光にまったく及ばない」この部分は、「透過光」を「透過光で観察するリバーサル」とするとその通りです。濃度範囲とは、白から黒までの濃さの範囲で、その中に調子が再現されるので、濃度範囲が大きいほど深みのある画像がえられます。しかしだからといって、調子が良いかどうかとは別です。調子が良いというのは、大きな濃度範囲の中に適切な圧縮と伸長がなされ、自然な再現がなされることを言 います。濃度範囲でいうと、ネガカラーペーパーとダイレクトペーパーでは、ほとんど違いません。ダイレクトペーパーは既に述べたよう理由から、圧縮と伸長に制約があるため、調子再現が悪いといえます。
先の質問にお答えします。 理論上は、カラーネガに最適化された条件(スキャナーの特性や取り込みデータ)で取り込まれ、適切に出力したものであれば、カラーリバーサルフィルムとの階調再現性は変わらないといえます。同条件ということでなく、各々の最適条件ということが前提です。 一例ですが、カラーネガからフォトCDに取り込む場合、フィルムタームと呼ばれるカラーネガフィルムの銘柄別に用意された取り込みデータを選択して、スキャニングされます。もし持ち込まれたカラーネガの銘柄が4種類あると、すべて違った取り込みデータでスキャニングされます。最近の状態は不明ですが、以前コダックは、世界主要メーカーのカラーネガの銘柄、さらに主要メーカーの旧製品のカラーネガまでも含めた取り込みデータを用意して対応していました。新しく出たフィルムであると、このデータが用意されてない場合もあり、またフィルムの現像状態などから、用意されている取り込みデータで満足できる結果とならないことも多いと聞きます。この例からもカラーネガから、高品質に再現する画像を取り込むことの難しさを垣間見ることができます。 カラーリバーサルからフォトCDに取り込む場合、コダクローム(外式)か、エクタクローム(内式)かの選択しかありません。一般的に使われているカラーリバーサルフィルム(E-6処理が可能な)であれば、メーカーや銘柄に関わらず、同一の取り込みデータで取り込まれます。 カラーフィルムであれば、ネガかリバーサルかどちらからでも同じように取り込みが可能」という、スキャナーメーカーのコピーと同じになってしまいます。これには品質にこだわらなければということが、隠されているように思います。 何よりもカラーネガは、プリントに仕上げるまで、どのように再現されるか分かりません。つまりゴールが見えないのです。よくあることですが、プリントの焼き方が悪いと、ネガのフィルムが悪いと判断してしまうことが多いのです。その良否を決めるには、焼き濃度とカラーバランスを最適にしたプリントができて、やっと判断できるのです。撮影とネガカラーフィルムの現像、プリントの評価光源が適切であっても、プリントの仕上げが悪ければ判断できません。ところが、仕上がりのばらつきが多くみられるサービス判プリントの善し悪しで、使ったカラーネガフィルムの善し悪しを決めている人がほとんどなのです。 カラーリバーサルは、適切な撮影と現像、適切な評価光源の条件が満たされれば、そのフィルムなりの特性で評価することができます。普及品のフィルムスキャナーでも、カラーリバーサルの取り込みには、それなりに注意を払った取り込みデータが用意されていると思います。それはカラーリバーサルの調子がどう取り込まれたか、すぐに比較されるからです。
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.8 ) |
- 日時: 2003/10/21 16:06
- 名前: りゅう
- 井本さん
ご丁寧な解説をいただき、ようやく納得できました。ネガはやはりプリント前提のもので、単独でどうこう扱おうとして扱えるものではないのですね。 かといって、最近発表された各社のポジフィルムを使ってみると、心なしか旧世代のそれよりコントラストがきついなあ、という感じがしています。難しいですね。
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.9 ) |
- 日時: 2003/10/21 23:33
- 名前: TAMA
- りゅうさん。スキャンに関して違う角度から。
フィルム撮影では、ネガはオーバー目、ポジはアンダー目といいますよね。プリントや印刷原稿、投影の目的では正解ですが、スキャナーの特性からみると、可能な限り(階調がなくならないレベルで)ネガはアンダーに、ポジはオーバーにすべきです。
スキャナーにとって悪条件は、濃いフィルムです。 濃度が高いとほんの数パーセントの透過光で階調を作り出さねばならないため、適切な=ダイナミックレンジの撮りやすい濃さを目標にすべきです。従ってスキャンを前提にした適正露光は通常よりも難しくなることを意識してください。 業務用のドラムスキャナーの場合はピクセル単位で解像度設定が可能なのと、フォトマルを用いていますので、通常のままでもかまいません。この場合はポジフィルムが有利です。
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Re: ポジとネガの階調再現性 ( No.10 ) |
- 日時: 2003/10/23 12:44
- 名前: りゅう
- TAMAさん
>ネガはアンダーに、ポジはオーバーにすべきです。
これも知らずに、ポジの取り込みの際はアンダー目のコマを選んでスキャニングしてました。
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